■ 419詐欺とロマンス詐欺:違いと類似点を知って警戒を

「419詐欺(scam)」は、主に1970年代から1980年代にかけてナイジェリアを中心に広まり始めた詐欺手法です。

はじめのころは、手紙やFAXを通じて行われることが一般的でした。

これらの手紙やFAXは、ナイジェリアの高官や王族を名乗る人物が大金を持っているが、手続きや手数料の支払いが必要だと主張し、被害者からお金をだまし取る内容でした。

インターネットの普及と共に、1990年代から2000年代にかけて「419詐欺」は電子メールを介した詐欺として進化し、さらに多くの人々に拡散しました。

被害者に高額の遺産や当選金が約束され、その代わりに手数料や税金の支払いが求められるパターンが広く知られるようになりました。

このような詐欺メールは、被害者が大金を手に入れるために一連の支払いを行うことを要求し、被害者は結局大金を受け取ることはなく、詐欺師にお金を送る結果となることが多いです。結婚や仮想通貨の利益を約束するようなロマンス詐欺も同じです。

「419詐欺」は1970年代から1980年代に始まり、その後インターネットの普及とともに進化して現在に至るまで存在している息の長い詐欺手法です。

419の由来

この419という数字は、ナイジェリア刑法の419条に由来しており、金銭をだまし取るための詐欺的な行為を規制しています。

「419」は、いまでは419条で取り締まり対象となるような詐欺の種類を広く指す用語として使われ、ナイジェリアのみならず他の国々でも同様の手法で行われる詐欺活動を言い表すことがあります。

以下は、ナイジェリア刑法の419条の条文の日本語訳です。

ナイジェリア刑法第419条
偽計による物品の取得


偽計を用い、詐取の目的で、他人から盗品となり得る物を取得した者、または他人に盗品となり得る物を引き渡すようそそのかした者は重罪となり、3年の禁固刑に処される。

その物が1,000ナイラ以上の場合、7年の禁固刑に処される。

偽計によって誘引された契約を媒介として、物が入手されたり、その引渡しが誘引されたことは重要ではない。

犯罪者は、犯罪を犯していることが判明しない限り、令状なしに逮捕することはできない。

419詐欺とロマンス詐欺の関係

419詐欺とロマンス詐欺は、いずれも「前払い詐欺」の一種です。

前払い詐欺(または前払い金詐欺)とは、被害者に対してある種の支払いを事前に要求し、その後約束された商品、サービス、または報酬を提供しない詐欺行為のことを指します。

前払い詐欺で詐欺師は、高額の報酬、素晴らしい取引、あるいは価値のある商品やサービスを提供すると宣伝し、被害者から前払い金を騙し取ることを目的としています。

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419詐欺とロマンス詐欺の違い

419詐欺とロマンス詐欺は、被害者から金銭をだまし取るという共通の目的を持っていますが、ターゲットや手法が異なる点で区別されます。

419詐欺は主にビジネス関係や投資家を狙い、高額な取引や遺産の受け取りなどの偽の口実で前払い金を要求します。

一方、ロマンス詐欺は恋愛関係を願う人々を狙い、偽の恋愛関係を築いて信頼を得た後、緊急事態や困難な状況を装って前払い金を要求します。

詐欺の種類 419詐欺 (ナイジェリア詐欺) ロマンス詐欺
ターゲット 主にビジネス関係や投資家を狙う 主に恋愛関係を願う人々を狙う
目的 被害者から金銭をだまし取る 被害者から金銭をだまし取る
手法 高額な取引、遺産の受け取りなどの口実で前払い金を要求 偽の恋愛関係を築いて信頼を得た後、緊急事態や困難な状況を演出し、前払い金を要求
コミュニケーション ビジネス関連の話題、法的手続きに関する議論など ロマンティックなメッセージや愛情表現、将来の計画など
イメージ 高利益のビジネス取引を提案する詐欺 ロマンスを通じて感情を利用する詐欺
影響 企業やビジネス関係者が被害に遭う 恋愛感情を持つ個人が被害に遭う
ナイジェリア詐欺とも呼ばれる "キャットフィッシング"(偽の個人情報を使ったオンライン詐欺)も含まれる

419詐欺とロマンス詐欺の類似点

419詐欺とロマンス詐欺は異なる詐欺の種類ですが、次の通りいくつかの共通点があります。

  1. 金銭の要求
    どちらの詐欺も、被害者から金銭をだまし取ることが目的です。419詐欺では高額な取引や遺産の受け取りなどの名目で、ロマンス詐欺では恋愛感情を利用して前払い金を要求します。

  2. 信頼の構築
    詐欺師は被害者と信頼関係を築こうとします。419詐欺ではビジネス関係を演出し、ロマンス詐欺ではロマンティックな関係を演出し信頼を得ます。

  3. 緊急事態や困難な状況
    詐欺師は被害者に対して緊急の事態や困難な状況が発生したと演出し、前払い金を要求します。419詐欺では法的手続きの進行を妨げるとか、急な支払いが必要だと言い、ロマンス詐欺では偽の病気や事故の発生を演出し、急な支援を求めることがあります。

419詐欺犯はどうやって被害者に接触するのか

419詐欺犯は、通常は電子メール、手紙、電話、ソーシャルメディア、オンライン広告などを通じて被害者と接触します。

これらの方法は、私達が日常接点のあるツールやメディアですので、怪しい人物からの接触には十分警戒する必要があります。

彼らは身分を偽装し、架空の物語やお願いで被害者の心を揺さぶります。一般的には以下の方法で被害者と接触します。

  1. 電子メールや手紙
    被害者に対して偽名や架空の組織、銀行、法人などからのメールや手紙を送ります。これらのコミュニケーションでは、大金の入手やビジネス取引の提案などが行われ、被害者に対する信頼を得ようとします。

  2. 電話
    詐欺師は被害者に電話をかけ、高額の報酬やプレゼントを約束し、彼らの興味を引きます。電話をかける際には、被害者の情報をインターネットや公開されているデータベースから入手していることがあります。

  3. ソーシャルメディア
    詐欺師はソーシャルメディアプラットフォームを利用して、架空のプロフィールやアカウントを作成し、被害者と接触します。友達リクエストやダイレクトメッセージを通じて詐欺を行うこともあります。

  4. オンライン広告
    詐欺師は、オンライン広告やクラシファイド広告サイトを使用して、高額な商品やサービスを提供するかのように見せかけて被害者を引き寄せます。

  5. ソーシャルエンジニアリング
    詐欺師は被害者の関心や個人情報に基づいて、より信頼性のある話を作り上げることで、被害者を欺くことを試みます。

419詐欺犯は上記のような方法で、あなたと接触し騙そうとします。十分お気をつけください。

419詐欺の被害を防ぐための注意点

419詐欺は、ロマンス詐欺との共通点があるビジネス系の詐欺です。あなたが詐欺の被害者とならないため、次のような注意と警戒が必要です。

  1. 疑いを持つ
    未知の人物からの急な金銭要求に対しては疑いを持つことが大切です。どんなに信頼できると思っても、急な前払い要求は慎重に考えるべきです

  2. 身元を確認する
    オンラインで知り合った人物や取引相手の身元を確認することが重要です。公式な連絡先を使って確認をとるなどして、相手が本当に信頼できるかを確認しましょう

  3. 感情と判断の分離
    相手が親しみやすい人物である場合、感情が判断を鈍らせることがあります。冷静な判断を保つために、感情と論理を分けて考える努力をしましょう。

  4. プライベート情報の保護
    他人に個人情報や預金口座の情報を安易に提供しないようにしましょう。詐欺師はこれらの情報を悪用してあなたを狙う可能性があります。

まとめ

他人との取引や関係を築く際には慎重さと冷静な判断が重要です。急な前払い要求や信頼関係の急速な構築には疑問を持ち、詳細な調査と確認を行うことが被害を防ぐための重要な鍵となります。

信頼できる人物は急な支払い要求などすることはありません。次の記事やチェックリストをもとに注意し相手を観察してください。


参考文献

作成 2023-08-22    更新 2023-08-24


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