金融庁から公開された「暗号資産:FATF 基準の実施状況についての報告書」(2023年6月) 要旨(仮訳)についてご紹介します。
国際的な組織であるFATF(金融活動作業部会)は、仮想通貨(暗号資産)や仮想通貨取引所に対する規則を作っています。これらの規則は、マネーロンダリングやテロ資金供与などの犯罪を防ぐために必要です。
この報告書は、金融活動作業部会(FATF)がマネロン・テロ資金供与対策(AML/CFT)に関する国際基準を暗号資産及び暗号資産交換業者に拡大適用してから4年が経過した現在の状況についての要約です。以下は主な要点です。
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背景
FATFがAML/CFT基準を暗号資産市場に拡大適用してからの実施状況を評価します。
マネロン・テロ資金供与対策(AML/CFT)は、資金洗浄(マネーロンダリング)とテロリズム資金供与を防ぐための規制と対策です。これらの活動の阻止と監視は金融機関や関連業界により実施され、国際基準に則って行われます。
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主な調査結果
- FATF基準に対する実施状況は芳しくなく、多くの法域が要件に適合しておらず、金融セクターの他の部門に比べて遅れています。
- 98の相互審査報告書とフォローアップ報告書によれば、73の法域が基準に一部適合又は不適合です。
- 多くの法域は基本的な要件を満たすのが難しく、一部は暗号資産交換業者を規制するかどうかを決定していない。
- トラベルルールの実施も不十分で、相互運用性の向上が必要です。
トラベルルールは、金融取引の透明性を確保し、資金洗浄(マネーロンダリング)とテロリズム資金供与を防ぐための規制の一部です。これにより、国際的な資金移動が追跡可能になり、不正な資金の流れを検出する手段として使用されます。金融機関はトラベルルールに従って取引情報を記録・報告し、監督当局や規制当局に提供します。
マネロン・テロ資金供与対策(AML/CFT)は、資金洗浄(マネーロンダリング)とテロリズム資金供与を防ぐための規制と対策です。これらの活動の阻止と監視は金融機関や関連業界により実施され、国際基準に則って行われます。
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新たなリスクと市場の動向
- 暗号資産関連の不正活動が国際的な安全保障に脅威をもたらしており、北朝鮮によるランサムウェア攻撃やテロ資金供与に使用されていることが懸念されています。
- 分散型金融(DeFi)やP2P取引を含むアンホステッド・ウォレットもAML/CFTのリスクをもたらし、これらのリスクを軽減するための対策が必要です。
分散型金融(DeFi)とは、中央機関を介さずにブロックチェーン技術を用いて金融サービスを提供する分野であり、通常の金融機関や中央機関の代わりにスマートコントラクトを使用します。
P2P取引は、個人間の直接取引を指し、中央機関や仲介業者を通さない方法で資産やサービスを交換することです。通常、オンラインプラットフォームを介して行われます。
アンホステッド・ウォレットは、中央の管理者を持たない暗号資産の保管手段であり、ユーザーが完全な管理権限を持つウォレットです。
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公共セクターへの提言
- 法域はFATFのガイダンスを活用し、AML/CFTリスクを特定し、対策を講じるべきです。
- トラベルルールの実施と、その運用に関する効果的な監督と執行が必要です。
- DeFiやP2P取引に関連するリスクを評価し、共有することが奨励されます。
公共セクターとは、政府や政府機関によって運営される部門であり、一般的に公共サービスの提供、法的規制、国内外の政策形成などを担当します。
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民間セクターへの提言
- 暗号資産交換業者とトラベルルール遵守ツールの提供者は、FATFの要件に準拠することと相互運用性の向上を優先すべきです。
- 暗号資産関連のリスクを評価し、適切なリスク軽減策を実施すべきです。
- 暗号資産エコシステム全体のリスクを監視し、共通のリスク理解を確保するために規制当局と協力することが重要です。
民間セクターとは、個人や法人によって所有および運営される部門で、営利を追求する企業や非営利団体、個人事業主などが含まれ、市場での商品やサービスの提供に焦点を当てています。
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次のステップ
FATFは、AML/CFT基準の改善に向けてロードマップを採択し、引き続きアウトリーチや支援を提供する予定です。さらに、DeFiやP2P取引に関する知見を共有し、市場動向を監視します。
この報告書は、暗号資産とその関連業界におけるAML/CFT規制の実施状況と新たなリスクに焦点を当て、公共セクターと民間セクターの双方に対する提言を提供しています。
参考資料:
作成 2023-09-06