社会工学は、人々の心理にアプローチし、人々の考えや行動に変化をもたらす力や効果を研究します。この研究結果を用いて人々の行動を操る技術や手法を研究する学問です。
言い換えれば、人々がどのように考え、感じ、行動するかを理解し、それに基づいてコミュニケーションや行動を誘導する方法を追求する分野です。これをソーシャルエンジニアリングとも呼びます。
この記事では、現実世界で詐欺師が意識または無意識的に駆使する「人間の行動に影響を与える8つの手法」について社会工学的な観点よりご説明します。
これらの手法を知れば、詐欺師たちがどのような手法を使って人々を惑わし、操作するかを理解し、自己防衛のための知識を身につけることができます。
人間は自分の行動に一貫性を保ちたいという習性がある。例えば、一度契約した月刊誌を中々解約できないとか、長くいる会社を中々辞められないことなどがあります。
この習性は、詐欺の被害者が一度詐欺師を信じてしまうと、行動の一貫性を保つため、少し疑問に思うことが遭っても、詐欺師を信じ続け、お金を送金し続けるというものです。詐欺師はこの習性を悪用します。
「ギブアンドテイク」、つまり、他人が何かをしてくれたら、お返しをするという考え方です。詐欺師は対象者に何かをプレゼントしたり、情報を提供したりすることで、被害者がお返しをする必要を感じるように仕向けます。
役割や責任、感情に訴えかけることで、他人の行動に影響を与えることができます。
例えば、オレオレ詐欺などは代表的なもので、詐欺師が子供になりすまして、老父母に困っていると偽の助けを求めお金をだまし取る手口です。この方法は、父母の責任感や義務感に訴えかけることで、影響力を持つ方法です。
人間は、一度譲歩すると、それを取り消すことが難しくなります。
詐欺師は、被害者に対して最初の小さな譲歩を行い、その後さらなる要求や詐欺行為を行います。最初の譲歩によって被害者は安心し、詐欺師に対して信頼を持つ傾向があります。
詐欺師はその信頼を利用して、被害者が徐々に大きな譲歩を行うよう誘導します。
例えば、詐欺師は商品の価格を最初は高く提示し、その後割引や特典を提供することで譲歩を行います。被害者は最初の高い価格と比較して安く感じ、商品を購入するかもしれません。
しかし、実際には詐欺師は元々の本来の価値よりも高い価格で商品を売っている可能性があります。
また、詐欺師は被害者に対して一時的な譲歩を行い、その後に本来の要求や目的を実行する場合もあります。被害者は最初の譲歩に安心し、詐欺師の要求に応じる可能性が高くなります。
人間は、手に入りにくいものに興味を持ちます。
詐欺師は、商品やサービスを提供する際に「これはあまり手に入らないものですよ」と希少性を強調することで、被害者の関心や欲求を引き起こし、詐欺に巻き込もうとします。
例えば、「今だけ特別価格」といったキャンペーンを実施し、被害者に今すぐ買って!と行動を促します。
被害者は商品の希少性や時間的制約によって焦り、冷静な判断ができなくなる場合があります。
一般に権威を持つ人間は影響力があります。
詐欺師は、権威ある振る舞いや外見を使って、被害者の行動に影響を与え、信頼を勝ち取ろうとします。
例えば、詐欺師は医師や弁護士、専門家などの偽りの資格や職業を語ることがあります。
被害者に対して自分が権威ある人間だと信じさせ、その信頼を利用して商品の効果や投資の安全性を強調します。
しかし、実際には詐欺師は権威や専門知識を持っていません。
被害者はその権威ある振る舞いや外見に惑わされ、詐欺師に対して信頼を抱き騙されてしまう可能性があります。
人間は、自分を好きな人や自分と似ている人に好意を持ちます。
詐欺師は、被害者に対して自分が似たもの同士であるかのように振る舞い、被害者との類似点や共通点を強調します。
彼らは、被害者に自分との関係性や信頼感を築くために、共通の興味や経験を持つことを語ることがあります。
人間は判断をするとき、他人の評判を参考にすることがあります。
詐欺師は、他の人が「これはすごい!」や「みんなが使っている!」と言っているように見せかけることで、被害者の行動に影響を与えます。
例えば、偽の評価やレビューを書いたり、捏造したデータや架空のソーシャルメディアを使って、商品やサービスを信頼性があるとか人気があるように見せます。
被害者はこのような評判に騙されて、詐欺師に騙される可能性があります。
以上、詐欺師が使う「人間の行動に影響を与えるための手法」を8つご紹介しました。
このような社会工学の手法を知ることで、詐欺師のトリックに騙されることなく、冷静に物事を判断し、安全に行動するスキルを身につけることが可能です。
自分や周りの人々を守るために、これらの手法を理解し対処できる力を養っていきましょう。
参考文献
Copyright © 2025 国際ロマンス詐欺予防研究所 All Rights Reserved.